華僑・中国人の投資ノウハウ「チャイナマネーを追え!」:第9回

第1章:今、円は高リスク。資産運用を「開国」せよ

第9回

■投資先進国、シンガポールに学ぶ

日本と好対照をなすのが、マネーリテラシーの高いシンガポールでしょう。

シンガポールが1人当たりGDPで日本を追い抜いたことは記憶に新しいところです。

シンガポールは、国際競争力(IMDレポート)やビジネス環境(世界銀行レポート)、投資・国際貿易開放度(世界経済フォーラムレポート)など、数々の指標で世界1位か上位に位置づけられています。

シンガポールの2010年度上半期のGDP成長率は何と17.9%で、通年では13%から15%程度となると予測されています。この成長率は、主要国の中でも圧倒的なトップです。

国土が狭く、資源に乏しいという点で、シンガポールは日本と同じ条件です。しかし、シンガポールは、税率を低く抑え、不必要な規制は設けず、企業がビジネスをしやすい環境を徹底的に整備すること、言わば「楽市楽座」で、世界中の金、企業、情報、人を集めて繁栄してきました。シンガポールから日本が学ぶべき点は、多数あると思われます。特に国家としての投資レベルの高さは必須でしょう。

一つの例として、政府が運営しているファンドについて見ていきましょう。

国内経済はすでに成熟化しており、今後国民を養っていくには、過去の蓄積を海外投資し、その利益で食べていく必要があるという危機感で、シンガポールの政府ファンドは運営されています。

前述したように、シンガポールには、テマセクとシンガポール政府投資公社(GIC)という2つの代表的な政府ファンドがあります。これらは政府の国家戦略を投資という形で遂行し、他の国の政府ファンドとは違って、リスクをとってリターンを追求し、キャピタルゲインを国民に還元する役割を担っています。

●テマセク

多数の政府系企業を管理する持株会社として1974年に財務省の100%出資で設立されました。「優良企業に対する投資家、及び長期保有株主として、取得株式の価値を創造し、それを極大化すること」をその目的に掲げており、投資ファンドとしての顔も持っています。

持株会社としては、シンガポール・エアラインなど、いまだに多くの政府系企業の大株主ですが、国内政府系企業の育成という役割はほぼ達成されたため、傘下の政府系企業を次々と民営化して売却した後、2003年頃からはその上場益や配当収入を資金源として外国企業への株式投資を積極化しており、企業買収も積極的に行うなど、投資ファンドとしての性格が強まっています。

設立当初に財務省が出資した金額3.5億シンガポールドルは、現在、総資産1,860億シンガポールドルに達しています。2008年のリーマンショックで一時資産額が減少しましたが、2010年3月段階では前年同期比43%増と大きく盛り返しています。35年間の年間平均利回りは17%以上と驚異的な数値を叩きだしています。そして、設立後の資産運用に関しては、保有株を売却して得たキャピタルゲインや配当収入と債券発行で賄い、税金の注入を一切受けていません。

ちなみにテマセクは、S&Pやムーディーズなどの格付け会社からトリプルAの評価を受けています。テマセクの投資先分野は、主に金融(37%)、通信・メディア(24%)、運輸・物流(18%)です。また投資先エリアは、シンガポール国内40%、その他アジアが40%、日本を含む先進国が20%ですが、最近は中国を中心としたアジア新興国への投資を活発化させています。

テマセク傘下の有力企業、キャピタランドは、元々公営住宅を供給してきた住宅開発局の事業部が独立したものですが、その不動産に関するノウハウを活かし、各地で投資を行い、今では東南アジア最大の不動産会社にまで発展しています。

キャピタランドの投資姿勢は、割安感のある物件に投資し、長期保有した後に売り抜けるのを基本としていますが、時には経営者を送り込んで再建し、価値を上げて売却することも行っています。

余談となりますが、先日キャピタランドの幹部と会った際、「これから中国の300カ所に大規模ショッピングモールを造っていく予定だ」と聞き、そのスケールの大きさと政府系企業とは思えない積極的な事業姿勢に絶句してしまいました。

次回は、シンガポール政府投資公社(GIC)について説明します。

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