華僑・中国人の投資ノウハウ「チャイナマネーを追え!」【第2章】:第16回

第2章:世界に飛び出すチャイナマネー

第16回

■中国政府が奨励する対外投資

2005年7月に米ドルに対して切り上がった人民元は、2008年に入り、1米ドル=6.83元前後で再び固定(ペッグ)されてきましたが、2010年6月19日の弾力化の発表により、米ドルに対し、再び緩やかな上昇を始めました。これにより、ホットマネーの流入が再開し、今年に入り2.4兆ドルで推移していた外貨準備高が7月から再び積み上がってきており、2010年9月現在で2.6兆ドル、前年比17%増となっています。

そもそも、中国においては、人民元の為替水準はコントロール(「操作」という言い方のほうが適切でしょう)されています。中国人民銀行は外貨(主に米ドル)を買って、人民元に換えるため、外貨準備も積み上がり、必然的に人民元のマネーサプライが上昇し、国内のインフレや資産バブルを生む原因となってきました。

人民元の為替操作をやめない限り、この構造は変わりません。

中国政府は、膨らんだ外貨準備高を外貨で運用するため、2007年、中国投資有限公司(CIC)を設立し、対外投資を加速させています。この中国版SWF(ソブリン・ウエルス・ファンド)はシンガポールのSWFをロールモデルとしています。

このほか、最近は民間企業の対外投資も奨励しています。

基本的に、為替を管理している中国では、人民元の外貨への交換は、貿易取引などの経常取引では緩和されてきていますが、対外投資などの資本取引に関しては厳しく規制管理されています。

ところが、ここに来て民間企業の対外投資が急増しています。資源、技術力、ブランド力など中国が不足しているリソースを補う目的の買収が多いことがわかります。

中国商務省が10月15日に発表した1〜9月の中国から海外への直接投資額(金融業を除く)は前年同期比10.4%増の362億7,000万ドル(約2兆9,400億円)だった。

1〜9月の対外直接投資は118カ国・地域の2,426企業が対象。投資額のうち企業買収は112億ドルで、全体の30.9%を占めた。

国連貿易開発会議(UNCTAD)の2009年の統計によれば、中国の投資額は世界6位。

同時に発表した1〜9月の海外から中国への直接投資額は前年同期比16.6%増の743億4,000万ドルだった。

対外、対内ともに投資が順調に増え、世界のマネーの流れの中で、中国の存在感が一段と高まっている。(2010年10月16日付『日本経済新聞』)

先に述べたように、輸出や海外からの投資により得た国内の資金を海外に環流させることによって、国内のマネーサプライを調整する目的もあり、中国政府は「走出去(外に打って出る)」をスローガンに企業の海外投資を奨励する政策を進めています。

2009年3月、中国商務省は、「海外投資管理弁法」を定め、中国の民間企業が海外投資を行うための認可の審査基準の緩和などを盛り込んで、対外投資を促進しています。

これによると、1枚の申請用紙で3日以内に投資認可が出るという対応が可能となり、今まで認可がいつになるかわからないと言われていた海外投資認可が格段にスピードアップしました。

余談になりますが、2008年後半、東証一部上場不動産会社のパシフィックマネジメントが中国浙江省の複数の投資家の第三者割当増資を受けるというIRが流れ、株式市場でその実現性が大変話題になり、同社の株価が乱高下したことがありました。当時、このIRを見た私は、中国当局がそんなに簡単に投資認可を出すのか大いに疑問を持っていましたが、案の定、投資認可が出ず、資金調達ができなかった同社はついに破綻に追い込まれました。この法律が先に制定されていれば、事態は変わっていたかもしれません。

中国本土企業は、最近特に資源国の鉱業資産に投資するケースが増えているようです。

中国および香港の企業が関与した2009年の海外での鉱業関係の買収および投資は130億ドル(約1兆1,300億円)で、2005年の100倍に達したようです。

中国企業の海外の鉱業資産への買収・投資は2010年も前年と同様のペースで伸びており、買収・投資案件は76件を数え、総額で83億ドルに上っているようです。

中国が次々に鉱物資源の買収を成功させるようになった時期は、2008年の金融危機と重なっており、この時期の鉱物資源関連の国際的なM&Aのうち、中国が3分の1を占めています(2010年10月22日付『ウォールストリート・ジャーナル』)。

金融危機を受けて、中国の投資家による海外投資が実現するようになったのは、鉱業会社の方がプロジェクトの資金手当てのため中国資金を必要としているからです。まさに、チャイナマネーの面目躍如と言えるでしょう。

これまでの投資ノウハウ【第2章】

第16回
第15回
第14回
第13回
第12回
第11回
第10回
第9回
第8回
第7回
第6回
第5回
第4回
第3回
第2回
第1回

華僑・中国人の投資ノウハウTOPへ


金融株式投資情報TOP