通貨の価値?


2007年8月29日の日経夕刊に、三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部長の五十嵐氏が、十字路というコラムを寄せていたのですが、いい内容なので紹介したい。

ちなみに、五十嵐氏とは三和銀行資金為替部時代に一緒に仕事をさせていただきました。当時(1990年代前半)、私は資金為替部にて金利のトレーディングをしていたのですが、調査部の彼がマーケットエコノミストとして資金為替部に来られた。

調査部出身の方がマーケット部門へ配属されたのは、調査というと統計とにらめっこして分析している堅物の方々であったが、分析してもマーケットの動きを説明できなければ何の意味もないということで、マーケット部門の中にいて統計とマーケットを分析するという新しい試みでした。

こうした経験のおかげかどうかはわかりませんが、彼の説明は素人にも、とてもわかりやすいものなのです。

ワールドビジネスサテライトに出演しているときの彼の説明は、わかりやすくありませんか?

前置きが長くなってしまいましたが、このコラムの内容は、

ロンドンの地下鉄の初乗り料金が1,000円というニュースが話題になりましたが、これは為替の影響だけでは説明がつかず、所得の上昇率の差も大きく影響している、ということなのです。

コラムに書いてある説明は、

95年当時1ポンド150円ほどであるから、この10年でポンドは対円で6割上昇した。

これで料金を割り引いても600円もすることになる。この10年に英国のGDPが9割増大したのに対し、日本は6%しか増えていない。95年を基点にすれば、英国の所得は1.8倍になっている。

これで600円を割り引くと330円となる。

更に、彼は続ける。

一般に物価上昇率は低い方がいいとされおり、名目所得がをインフレ率で割り引いた実質所得の方が重要だから。しかし、名目所得が増えなければお話にならない。

ロンドンの地下鉄料金はロンドン子にとっても高いが、日本人にとってはもはや払えない金額になっている。

とても重要なことを示唆していると思います。

円高なんかありえない(一時的には別)、外貨投資を個人は増やすべき、と私が主張する根拠はここにあるのです。

通常、金利が高い国は通貨安になります。計算式を建ててみれば自明の理ですね。

しかし、これは事前のものなのです。輸出入業務をやっている方ならわかりやすいでしょうが、為替の先物予約をすると現在よりドル安・円高の水準で予約できると思います。

これはドルの金利が円金利よりも高いからです(ドル・ディスカウントといいます)。

しかし、事後的には必ずしもそうならない、というか、最近ではほとんどそうならないのです。

なぜか?

表面的には円安が続いているからなのですが、この元凶は日本の名目GDPが増えないからだと私は思っています。

名目GDPが増えないということは、国民の所得が増えていない、しかも他国比かなり差があるということなのです。

これが何を意味するかを、前述の五十嵐氏は端的に示しているのです。

購買力平価が成立すると仮定して、1ドル100円、1個のリンゴが米国では1ドル、日本では100円としましょう。

ここで米国では所得が1.5倍となり、日本では所得が1.05倍にしかならない世界を考えてみます。

すると米国では、1割る1.5で、リンゴ一個が実質67セントになり、日本では100割る1.05で、95.24円となり、購買力平価が成立するので、95.24割る0.67で、1ドル142円ということになるのです。

この計算をする上では、通常は実質と考えなければならないのでしょうが、低インフレの時は、現状では名目でも構わないと思います。

もちろん、地下鉄料金は公共財であって、輸出入ができるものではないという議論もあります。

でも重要なことは、我々は世界のどこにでも住むことが出来るという「選択」の自由を手にした今、資本財だけではなく、あらゆる財、サービスの価格を考慮したプライシングが行われつつあり、それを意識した投資行動を取ることが要求されていると考えるべきなのです。

名目ゼロ成長、かつ米国より低金利を強要され続けている通貨が、強くなるはずがないのです。

第1回:通貨の価値?(無料)

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